ショートショート「ウサギのぬいぐるみが可愛くて仕方なかった。」

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ウサギのぬいぐるみが可愛くて仕方なかった。

あの頃見たもの

幼い頃の記憶を書き綴りたい。
今日は祖母の命日だ。
先ほど墓参りし「どうもこうもなく過ごしているよ。」と手を合わせてきた。
片田舎の4世代8人家族だった頃を懐かしく思い出している。
あのころ見たものを少しだけ書き残しておきたくなった。

幼い頃、両親と一緒に厩と呼ばれる別棟の建物の2階で寝ていた。
ここは、私が生まれるずっとずっと昔に馬を飼っていた建物で、そばにある山の木を伐り出して建てたのだと知らされている。材木は太く頑丈で歪もない。梁も太く立派で築200年はとうに経っている今でも、倉庫として用を成している。

古めかしい物たち

厩の通路には、母の嫁入り道具のタンスがいくつかと、大昔からおいてあったような飾り棚が置いてあった。
タンスの中には、しょうのうの臭いがする古臭い柄の着物や何か雑貨類がしまわれていた。飾り棚の方には、父がコレクションしていたLPレコード、分厚い歴史小説や図鑑、モノクロ写真ばかりのアルバム、土産物であろう熊の木彫り、漆喰の人形、たぬきのはく製、勲章などが整然と美しく並んでいた。

少し気味の悪いものもあった。
飾り棚の一番上のガラス戸の中に、男女一対の達磨が飾ってあった。
妙に人間らしい顔つきの達磨だ。なのに達磨だから手足は無い。
寝室にたどり着くには、この達磨の前を通らなければならず、いつも目をそらしてすこし早歩きでそこを通ったものだ。

聞いてしまったお話し

ある夜。ふと目が覚めた。
両親の話声がする。うつらうつらした意識の中でその声に耳を澄ます。

「この子に子どもができなかったらどうしよう。」

母が涙声でそう言ってる。父は母の訴えに生真面目に神妙そうに応えている。うっすらと開けた目で見えた景色は、母は膝をつき、父は胡坐をかいていた。絨毯の上には、寝る前に読んでもらった かこさとしの絵本が無造作に置いてある。掛け布団の隙間から少し上に視線を移すと、桃色の着物を着た漆喰人形がこちらを見ている。

父は、泣いている母を安心させるかのように、母の身体に手をまわし包み込んでいる。
それまで、両親がお互いの身体に触れているところなど見たことが無かったものだから、見てはいけない物の見てしまったような、恥ずかしいような嬉しいような不思議な気持ちになった事を覚えている。

父からのプレゼント

その日私は、ウサギのぬいぐるみを買い与えられた。特になにかの記念日でもないのに父が仕事帰りに買ってきてくれたのだ。

父は、飲み歩くこともないタバコもギャンブルもしない、時々日本酒を飲むくらいで、もちろん女の影なんてみじんも感じられない生真面目な人間だっだ。
父は時々、こうやってサプライズプレゼントをしてくれた。

私はプレゼントがすごく嬉しくて、ぬいぐるみをまるで自分の赤ちゃんのように抱っこしたり、ミルクを与える真似をしたりして、風呂に入るよう促されるまでずっとずっとかわいがった。子どもができたとはしゃぎ、すごく愛おしい気持ちでぬいぐるみと一緒に布団に入った。

思いがけない贈り物にはしゃぐ娘。
子どもができたと喜ぶ娘。

母の憂い

ほほ笑ましい光景のように見えるが、母は不安を抱いて泣いたのだ。
こんなにも子ども好きな我が子が、将来子どもを持てなかったら気の毒だと。まだ見ない未来を案じ、涙を流した。
大人になった今思うと滑稽なようにも思えるが、親とはそうゆうものなのだろうか。

私には子どもがいない。もう永遠に産み育てることが出来ない。

何かか違っていたら、人並みに結婚し子どもを産み育てていたのだろうか。
わからない。歳を重ねると、タラレバが増える聞いた。修正出来たであろうターニングポイントが増えるからだとも聞いた。

とにかく確かな事は、わたしは子どもを案じて涙を流すなんてことは永遠に出来ないということだ。
今日は、「あの夜、母が涙を流しながら妄想していたことが的中した。」という簡単なお話しを書き記した。

今日のコラム

今日は競輪の小松島記念最終日。あの選手はどんな走りを見せてくれるだろう。今日もまた、罵倒と賞賛の嵐を浴びるのだろうか。

今日こそ早目に踏み出すと思ったとか、違うコースがあっただろうにとか、もっと強かったのにとか、地元の意地を見せると思ったとか、ありがとう原田負けると思ってたよとか。

もうどうすることも出来ない現実に、今日も今日とて、妄想と願望でしかない言い訳を大絶叫するのだろう。

あなたもわたしも。

それにしても暑い。
夏が本気出してきた。
カレーを食べに行こう。                     fin

                                  *すべてフィクションです。

ハルミ
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