さちこの物語〜瀬戸内の小さな島で育った幸せな子の人生〜

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さちこの物語

私の名前はさちこ。幸せな子と書いて「幸子」です。

明日、37歳の誕生日を迎えます。

生い立ち

わたしの生い立ちを少しだけ綴ります。
瀬戸内の小さな島で育ちました。トイレが外にある田舎の古くさい家で自分の部屋はありません。祖母と一緒に寝ていました。
家族は少し複雑で、祖母と叔母と叔母の旦那さん、従妹と一緒に生活していました。両親の顔は覚えているけれど、今、どこにいるのかは知りません。知りたくありません。

島には中学校はあったけれど、高校には船で通学しました。
顔が可愛くないから、男の子たちには「ブス」だといじめられたし、友だちと思っていた女の子にも、影では「ブス」と呼ばれていたことに気づいていました。

お弁当は、毎日梅のおにぎりをひとつと牛乳をさくら模様のハンカチにくるんで持っていきました。恥ずかしいから、自分の席から離れずに急いで食べました。

高校卒業後は島を出て、ひとり暮らしを始めました。
アルバイトをしながら専門学校で調理師免許を取り、地元の会社に就職しました。

仕事の事

仕事は、飲食店のフランチャイズ営業です。調理師にはなれませんでした。
成績はまったく振るわず。上司にポンコツ呼ばわりされていました。
思い返してみれば、わたしの仕事ぶりでは仕方の無いことです。

クライアント訪問が主な仕事ですから、呼ばれたなら日本全国どこへでも行かなければなりません。
電車や飛行機の手配はなんとか出来ましたが、駅から目的地までGoogle先生にナビゲートしてもらったって、たどり着けないくらいの方向音痴でした。

遅刻しがちで、先方に迎えに来てもらうことも多く頭を下げるのはいつもの事でした。こんな調子だから契約が取れる事なんてほとんどありません。



コピー機さえ難しくて使いこなせなかったので、資料の用意がたまらなく苦手でした。出来損ないのわたしは、そつなく仕事をこなす同僚たちが眩しくて仕方なかったし、彼らのわたしを少しバカにしたような視線と話し声には気づかないふりをしていました。

幼い頃から、気づかないフリが身に付いてしまっていて、いつの頃からか、傷つきやすい自分を傷つけないための防衛本能が備わっていました。

知らんぷりが得意になりました。

上司には叱られっぱなしで、自分でも自分の出来の悪さにうんざりする毎日でした。
営業である以上、結果を数字で出さなくてはならず、さらに肩書がついて成果の質も求められるようになった頃、退職しました。

脳梗塞を患ったからです。

暮らし向き

あれから3年経ちました。
仕事はとっくに辞めて、少しの障害年金で暮らしています。
苦労して貯めたお金は詐欺にあって無くなりました。警察と弁護士に相談しましたが取り返すことは難しいようです。なんの進展もありません。


朝は目覚ましを掛けず、昼頃起き出します。起きても布団の中で過ごしています。
5畳の部屋では、ふとんの上が生活スペースです。ごはんも布団の上で食べます。
外出は定期通院と日用品の買い出しくらいです。
働いていた頃は出かけることが好きで、趣味でダイビングもしていましたが、もう出来ないでしょう。

5畳のアパートは壁が薄くて、隣のおじいさんのいびきが聞こえます。ベランダの洗濯機のフタは壊れて1年そのままだけど、それなりに使えているから買い替えるつもりはありません。お金もないですし。

居場所さがし

アルバイトでもしてみようかと考える日もありますが、元々可愛くも無い身なりが病気のせいでますます貧相になってしまったので、外には出ない方が世の為と考えています。

寂しい時は、SNSを開けばいいのです。


そこには、わたしに優しい言葉をかけてくれる人がいます。「一生懸命、生きているね。」って褒めてくれる人がいます。
わたしはこの人たちに囲まれている事が生きがいです。
優しい世界に浸っていたいのです。

時々、わたしの生きがいを横取りしようとする人がいて嫌な気持ちになります。居場所を奪われそうで恐怖を感じます。

現実は辛い事ばかりだけれど、ここの世界では、こんなわたしでも重宝されているのです。何が何でも邪魔はされたくありません。

『ボクは、ボクを大好きでいてくれる人を大好きでいるのに忙しすぎるから』
スヌーピーのセリフ。この言葉がわたしの座右の銘です。

わたしの名前はさちこ。幸せな子と書いて「幸子」です。

fin

*すべてフィクションです。



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