ふたつの指輪のお話し

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ふたつの指輪の物語

今日はタイトル通り、ふたつの指輪の話しをすこしだけ。

バブルの余韻

若い頃はよくアクセサリーを贈られた。
ティファニーやらカルティエやら、4℃やら、男の見栄と懐具合でさまざまだったが、「買い与えてやった。」と満足げな男の表情が忘れられない。
クラブでアルバイトしていた頃なんて、おもしろいように貴金属が増えて行った。バブルはすでに弾けていたけれど、余韻はまだ色濃くて、建築屋やら不動産屋の男の人たちは時代遅れなお金の使い方をしていた。
たかが飲み屋の女に外車を買い与えているおじさんもいた。

この頃、男の浅はかさを学習したのだと思う。まったくバカらしい世界を覗き見出来て、すごく愉快な毎日だった。価値観は人それぞれだとよく理解できたし、お金に群がる虫ケラを眺めているのも滑稽ですごく楽しかった。
カリスマと呼ばれている人でさえも、「お金を持っている人。」に媚びていておもしろかった。
こんなバカバカしい夜の世界は、社会人になる少し前にさっさと足を洗った。未練も無かった。

ひろくんの事

大学卒業間近に付き合い始めたのが昌広さん。名前の後ろと取って、ひろくんと呼んでいた。
駅前の大手電工会社総務部で働いていて、彼とは結婚を意識した家族ぐるみでのお付き合いしていた。

ひとつめの指輪

交際も少し経った頃、ご両親にハワイ旅行に誘われたけれど、私のスケジュールが合わずお断りした。ひろくん家族が帰国して間もなく自宅を訪ねると、お母さまからおみやげにとフェンディの化粧ポーチとフェラガモの財布をいただいた。
それと一緒に、薄い水色のリボンが結んである小箱を渡された。
小箱の中身は指輪だった。
ダイヤが7個埋め込まれたプラチナの指輪。
「ハルミさん、こんなデザインが好きって言ってたから。パパの知り合いの職人さんに頼んだんだけど、なかなか仕上がってこなくってヤキモキしちゃった。」そんな嬉しいエピソードも添えてくれた。
すぐに右手薬指にはめて見せると、ひろくんも、ひろくんのご両親も「いい出来だ。」と指輪を褒めていた。

いつまでも仲良くしていて欲しい。そんな想いが込められた指輪。

ふたつめの指輪

クリスマスには、ひろくんに指輪が欲しいとおねだりしたことがあった。
一緒にデパートに出かけ、あちらこちらを見て回った。わたしは気に入った2連のホワイトゴールドの指輪を指さすと、ひろくんはすぐにそれを包むように店員に伝えていた。
クリスマス限定デザインらしくあちらこちらに小さなダイヤが散りばめられている。

大好きだよ。そんな想いが込められた指輪。

うれしくってすぐに右薬指に付けた。箱やらパンフレットやらは手提げ袋に入れてもらった。ひろくんは、「よく似合うよ。」と少し笑っていた。
ペアリングが良かったけれど、ひろくんが恥ずかしがって希望は叶わず。それでもわたしは、私に似合うものを一緒に探してくれた事がうれしかった。
ひろくんには何を贈ったら喜んでもらえるのだろう。そう考え始めていた。

贈り物のこと

贈り物は、贈る相手の反応を妄想している時間がいちばん楽しい。

笑顔で受け取っている相手を思い浮かべると、つい笑みがこぼれてしまう。
それと同時に気に入ってもらえるのか、見当違いなものを贈ろうとしているのではないか、そもそも受け取ってもらえるのだろうかと、不安を抱えながら時を過ごすのもまた、贈り物をする醍醐味かもしれない。

ものに宿る想い。ものが行き来するたびに想いも動いていく。
なんてステキでバカらしい話しなんだろう。

指輪のいま

結局、ひろくんと結婚することはなかった。
それでも、このふたつの指輪は今も手元にある。
ふだんは常に視界に入るところに飾ってあり、手を伸ばせばすぐ触れる事が出来るところに置いてある。
旅に出る時は、いつもこのふたつの指輪を左薬指に付けている。

何故なのかは、あなたの想像に任せてみようと思う。

余談だが、他のアクセサリーは全て質屋に二束三文で売り払ってしまった。
そもそも贈り主の顔さえ忘れてしまっている。
ふたつの指輪しかアクセサリーは残っていない。
だって、まったく必要ないんだもの。飾る必要なんて無いんだもの。

                                 fin

*これはフィクションです。


↓↓贈り物を選んでいる時間が好き。

↓↓お花を贈られると嬉しくなっちゃう。

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